寿命有

難治性うつの闘病記録

メンヘラ製造業

 うつ病のほとんどは一二年で治るらしい。私は九年も患っている。難治性うつのようだ。

 私は自身をうつ病患者だと思っていない。天性の怠け者だ。あろうことか精神科医は誤診をし、向精神薬を処方してしまった。すっかり薬漬けだ。嗚呼、現代医学の悲劇! 憂鬱の谷へ降りず、うっかり足を滑らせて落っこちたのが私だ。

 他者とコミュニケーションをとるのはひどく難しい。自身の状態を伝えるのは至難の業だ。私は作家でも詩人でもない。ありあわせの言葉を借りて話すより他ない。私と担当医のすれ違いの原因だ。

 中江兆民は弟子の幸徳秋水に「私は述べて作らずであった」と言ったという。兆民がそうなら私はさらにそうだ。

 私が医者に全責任を押しつけているようで気に食わないヤツもいるだろう。私は相互伝達の齟齬について述べているのだから、私にも責はあると考えている。医者が全部悪いとは思っていない。ただ、最初に診察を受けたとき、医者と紙と鉛筆しかなかったのは思えば衝撃だ。そんな簡易に複雑な脳の障害がわかるのだろうか。私は純粋に疑問を覚える。

 過程もそうだ。私は投薬治療しかしてもらっていない。一時的にカウンセリングをしたが、カウンセラーは無愛想な女だった。はっきり言って最悪だ。

 ときどき車窓からスピリチュアルな治療方法を掲げる看板を見つける。現代医学に失望した人たちが訪れるのかもしれない。私はこの手の治療を信じていない。が、自分がのこのこと心療内科に通うのは同じくらい馬鹿らしいことに思える。五分未満の会話をし、処方箋を受け取り、薬局で薬をもらう。これを九年間も繰り返す私はカモなのでは?

 容易に後戻りはできない。薬をやめればひどい頭痛と吐き気に襲われる。私の身体はすっかりジャンキーのそれだ。

 都会へ行けば、最新の治療を受けられるのかもしれない。余裕のある者の特権もしくは幸運だ。地方には病院は数えるほどもなく、市場原理は働かない。薄くのっぺりと伸ばされた時間のなかでなにも進歩せずに破滅していく。私もそれだ。